ティロ脳

まどマギ考察を言い訳にした屁理屈サイト。でも全ては愛なので許してください。

巴マミに絡め取られた鹿目まどかの運命

 今さらですが、ほむらループ3週目、「ソウルジェムが魔女を産むなら、みんな死ぬしかないじゃない!(byマミさん)」のシーンとその影響についての考察です。

 個人的な話ですが、私は長い間ここが引っかかっていました。と言うのも、まどかの行動や決断が早すぎるような気がしていたのです。尺の都合で色々端折ったのかなとも思いましたが、先日思い付いたことがあったので、ちょっと書いてみようと思ったわけです。

(ほむらも色々とおかしいのですが、それについては置いておきます)



 マミの錯乱については、既に多くの方が指摘されてきたように、彼女の魔法少女としてのアイデンテティが正義の味方であることから考えれば、当然の帰結だと思います。魔女が人類の敵として討伐されるべきものであれば、魔法少女も魔女化する前に討伐されるべきである。あなたも、私も! 

 「魔法少女は魔女化する前に死ね」――これは悲しいけれど、ほとんど正論です。マミに限らず、事実を知った魔法少女にとって、十分検討に値する考えでしょう。

 しかし、この物語があまりにも悲劇的だったのは、マミが時期を選ばずにいきなり実力行使に及んでしまったことです。考えを口にする前に一人の仲間を殺してしまった。そして、これが新たな悲劇の連鎖を生んでしまった。私はこう考えます。



 これを前提として、話をまどかに移します。

 当時のまどかにとっても、魔法少女としてのアイデンテティは正義の味方であることでした。だから「魔法少女は魔女化する前に死ね」という考えとは非常に親和性が高い。さやかの魔女化を目の当たりにして、彼女も同じことが頭をよぎったかも知れません。ただ、たまたま先にマミが行動を起こしてしまったために、場を収める側に回らざるを得なかっただけなのでしょう。

 もっとも、まどかは人が重大な運命の岐路に立った時、かなり冷静な判断ができる子です。本来なら、改めて魔女化前に死ぬことの是非から、死ぬにしてもそのタイミングや心の持ち方、周りの人の接し方などを検討し、極力傷の少ない方法を模索したでしょう。

 しかしこの場面では、敬愛してやまない先輩がいきなり仲間を殺してしまった。検討する間もなく、「魔法少女は魔女化する前に死ね」が問答無用で彼女の中にバーンッと入ってしまった。このトラウマが、後の彼女の基本理念として固定化されてしまったように思うのです。



 そう考えると、なぜまどかはマミを制止するという一般的な対応をしなかったのか、ただただ優しかった彼女がなぜマミを殺し得たのか、という疑問にひとつの答えが見えてきそうです。

 まどかは、マミの人間性をかなり理解しています。正義の味方というアイデンテティを砕かれてしまった以上、もうこれ以上生きていけないことを知っています。それどころか、この様子では次の瞬間には魔女化してしまうかも知れません。ならば今、わたしがこの手で…!

 そう、これはマミを魔女化させないための介錯だったのではないでしょうか。あの状況でまどかが取りえた、精一杯の優しさだったのではないでしょうか。だからこその咄嗟の決断だったのではと思うのです。



 とは言えまどか自身も、自分がそれほど長くないことを自覚するほどに追い込まれていたと思います。しかし、ワルプルギス襲来前の自決は正義の味方として許されるべき行為ではない、とも考えたでしょう。ならば己の死に場所は、勝っても負けてもワルプルギス戦ということになります。こうして自ら命の期限を切ることで、ようやく希望を少し先に繋げることができたのではないでしょうか。

 また逆説的ですが、マミを手にかけてしまったことも、まどかの精神を一時的に保つ方向に作用したかも知れません。結果として彼女は、先輩殺しの罪を背負って生きる道を選びました。だからこそ、マミや杏子の分まで戦わなければならないと考えたのでしょう。

 このように考えていくと、どうもまどかの中ではこの段階でシナリオが出来上がっていたような気がします。手持ちのグリーフシードはひとつ。ならばワルプルギス戦の後はほむらに託して、自分は魔女化する前に死のう。そしてその介錯役をほむらに頼もうと。

 そう考えたからこそ、「二人でワルプルギスの夜を倒そう」というほむらの(空気を読まない)提案を、すぐに受け入れられたのではないでしょうか。



 さて、ここから先は別時間軸のため想像の域になりますが、最終的にまどかが魔法少女になる際の願いも、この考えが色濃く反映されているように思います。「全ての魔女を生まれる前に消し去りたい」との願いは、「魔法少女は魔女化する前に死ね」のバリエーションとも取れるからです。確かに「希望を信じた魔法少女を泣かせたくない」という彼女らしい優しさがその理由ですが、その潜在意識にはこの大前提があっての判断ではないでしょうか。

 まどかの願いが最善だったか否かについては色々と議論がありますが、彼女にしてみればその選択は然的だったのではと思うのです。



 ほむらの運命は、出会ったその日から現在に至るまで、まどかに絡め取られています。そしてまどかの運命は、ある日突然マミから投げつけられた「魔法少女は魔女化する前に死ね」という魔法少女の哲学に絡め取られました。

 そういった意味で、マミの拘束魔法は彼女の死後も、まどかを、そしてほむらをも縛り続けていたのかも知れません。



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