ティロ脳

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『叛逆の物語』は、美樹さやかの心残りを整理する物語でもあった(1/2)

 こんなことを考えるきっかけになったのは、『カラフル』をコマ送りで見ていた時でした。

 序盤のコーヒーカップのシーンでのさやかは、力任せにカップを回す杏子に振り回されながら笑っています。目を閉じて笑っています。この表情を見た時、私はさやかと杏子は対等ではないと感じました。確かにさやかは、このひと時を楽しんではいます。しかし、一歩引いて楽しんでいる、つまり楽しそうにしている杏子を見て楽しんでいるのではないか――そう思った時、さやかがこの世界に残してきた心残りは少なくないと感じたのです。

 二度と戻ることはない、だからこそ未練はないと自分に言い聞かせてきたこの世界(正確にはほむらのジェム中の結界)に、さやかはある使命を帯びて戻ってきました。そこに繰り広げられた世界は、奇跡と言ってよいでしょう。もしほむらがインキュベーターに捕まることなく順当に円環されたら、もしほむら以外の魔法少女が実験対象だったら、もし杏子やマミが結界に取り込まれなかったら…。

 普通に考えたら可能性の低い条件が重なって、こうやって今、再びみんなと同じ時を過ごすことができたのです。さやかは杏子の笑顔を見ながら、改めてそんな幸せを噛み締めていたことでしょう。そして、改めてこの世界への心残りを、きちんと整理しようと決意したのではないでしょうか。


 そう考えると、続くシーンにもさやかの思いが読み取れてきます。

 遊園地でのまどかとのシーン。

 さやかはまどかの手を引いて、少し前を歩いています。考えてみれば、魔法少女になる前の二人の関係はこんな感じでした。ちょっと内気なまどかを、さやかがリードし、守り、時にはいじって可愛がりました。この世界に戻った今、さやかとまどかは「円環の神さま」と「鞄持ち」という肩書きのない、自然な二人の関係を楽しんでいたのでしょう。

 さやかとマミがボートに乗っているシーン。

 生前のさやかは、マミを強くて頼れる先輩だと思っていました。しかし円環後に、彼女が本当は弱くて寂しがり屋のごく普通の女の子だったことを知りました。だから今は、心ゆくまで二人でお話して本当のマミさんの心に触れたい…。そんな気持ちがあったのかも知れません。

 そう言えば、オープニングではさやかだけ一人で映っているシーンがありません。もしかして、さやか冷遇されてる? と思ったこともありました。しかし、そんなことはなかったのです。前作でのさやかの悲しい運命を受けて、製作者はあえて彼女を一人にはしなかったのです。こっそりと続きの物語を用意してくれていたのです。

 そう考えると、ひたすらほむらが切なく描かれているこのオープニングにさやかの湿り気が加わって、ますます泣けてこないでしょうか。

 さやかの湿り気はオープニングだけではありません。仁美ナイトメアとの対戦シーン。

 恭介のことを「無神経なヤツ」呼ばわりしたり、ゆっくり仁美を優しく抱いたりして、吹っ切れたさやかを印象付ける場面です。しかしナイトメア登場時、さやかはしばらくその表情を視聴者に見せません。それどころか杏子からも距離を取って、彼女にも表情を見られまいとしているようにも思えます。

 つまり製作者は、私たちに妄想を促していると…。

 はい、妄想します。この時のさやかはまだ、いくらか恭介に未練を残していたのです。それでも彼女は、最初から気丈に振舞って、未練を悟られないような言動を取ったのです。前作のさやかを見ると、先に言葉で向かう先を示し、それに自分の心を従わせようとするきらいがありました。言動をそのまま受け取らない解釈も、あながち間違いではないでしょう。

 とは言えその時は、発した言葉と自分の本心との乖離があまりにも大きかったため、自縄自縛となって自滅してしまいました。でも、今のさやかにそんなことは無いはずです。多少無理してでもあえて吹っ切れた言動を取ることで、自分の気持ちにきちんと決着が付けられたのです。

 ホント、けなげかわいいヤツです。

 ガンカタ後のほむらとの会話。

 この場面の、さやかの話の運び方は見事です。ひとつの思いに囚われて暴走を始めたほむらを牽制しつつ、自力で真実に到達するよう上手に誘導しています。あの短気なさやかにしては珍しくも思えますが、この余裕は、単に彼女が成長したからと言うだけでは不十分かも知れません。

 多分さやかは、話し合いを最後まで成立させるため、事前にほむらの思考や行動のパターンを洗い直し、対応策を練っていた(突然の時間停止や攻撃も想定していた)のではないでしょうか。そしてこのことは、生前は対立したり誤解したりすることの多かった彼女に対する、さやかなりの精一杯の罪滅ぼしであったと思うのです。

 そして、最後に残した「じっくりと考えてから決めるんだね。悔いを残さないように」との言葉。遠からずこの世界を去ることになるほむらに対して、マミや杏子ともしっかりと向き合うように促したのでしょう。多くの未練をこの世界に残して去らざるをえなかったさやかだからこそ言える、重い言葉です。



長くなりそうなので、ここでいったん切って次回に続きます。



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